持続可能な努力

 
 

0 / 難しさの本質

 
小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただひとつの道だ - イチロー(プロ野球選手)
 
走った距離は、裏切らない。 - 野口みずき(陸上女子マラソン金メダリスト)
 
何か事を成すには努力が欠かせない。
 
そして多くの努力に関する格言は『とにかく諦めてはならない』『大量の時間を費やす』『長い期間、継続した方がよい』という旨を強く主張している。
 
やり方、すなわち努力の『質』よりも、期間などの『量』が強調されるのは不思議な感もある。その根本的な理由は、多くの人にとって、一番難しいことは『努力の仕方』でもなければ、『始めること』でもなく、『継続すること』だからだ。
 
実際のところ、『卓越した努力に膨大な時間を費やせることこそが才能だ』と主張をする人すらいる。
努力を自在に継続できれば、きっと自らの才能も自由に伸ばすこともできるだろう。
 
  • 超一流になるのは才能か努力か?
 
 
昔から優れた他人を見るたびに、その人の行動を真似た。
上手くいくものもあれば、そうでないものもある。どうやら自分にとって、継続しやすい努力とそうでない努力があるようだ。
 
つまり、こういうことである。『継続こそが大事だ。しかし継続するには自分に合ったコツが要る』。
 

自分に最適化する

 
うまくいった努力(すなわち、継続できた努力)と、うまくいかない努力(やめてしまった努力)の違いをつぶさに思考しなくてはならない。
 
どのような特徴量があれば、継続に寄与するか。あるいは、寄与しないのか。そうして『努力のやり方を自らに最適化』していく。
 
自分だけの『持続可能な努力』を手に入れるためにもがくことが自分のような凡人に残された道だと思う。
 
僕はありふれた人間だから、もしかするとその行動はあなたにも向いている努力の仕方かもしれない(し、そうじゃないかもしれない)。
 
この世に同じ人間は一人としていない。
けれども、全く違っているわけでもない。顔の作り、大体の身長、同じ言葉を使って、似たような時代を過ごしている。
 
この文章も、どこかの誰かには役に立つだろう。
 

 
 

 

1 / 目的地を定める

 

対象を見極める

 
継続以上に大事なのは、継続する価値があるかどうかの見極めだ。
  • 努力する対象は、自らが決めて、自ら継続し、自ら辞める。
 
人生は短い。それでいて、やって見て初めてわかることが多い。
  • 継続することがいくら大事といっても、価値が感じられなくなってしまったことに時間を浪費してはいけない。
  • 損切りをしなくてはいけない。
  • 含み損が生じている投資商品は、見切り、売ってしまわなくてはいけない。
  • 辛くても損失額を確定させなくてはいけない。
 
僕は、自らが重要と思える事柄に人生を賭けたいし、努力をしたい。
  • 自分が努力したいと信じられるものに思い切り、最後まで足掻いて努力する。
  • そのために、自分自身にとって価値がなくなってしまった事柄は、すべて捨てなくてはならない。
  • 数学の教師にならないことを決めたとき、部屋にあった数学の問題集や参考書を全て売り渡した。
  • 十分にコミットしていなければ、未練が残る:気持ちよく捨てるためには気が済むまで努力する必要がある。
    •  
自らの誇りに問うて、正しく辞めなくてはいけない。
  • 『辛いから』辞めるのではなく、『価値を感じないから』辞めなくてはいけない。
  • 自己欺瞞は自分を弱くする。自分に嘘をつけば、なにもかも信じることができなくなる。
    •  
 

計画よりも『まず始める』

 
四の五の言わずに、まず『スタートを切る』
  • ポートレートフォトを始めた当時、ほとんど手当たり次第、50人以上の知人友人に『アイコンを撮らせてほしい』と連絡した。
  • そこから、いろんな人とつながり、結果的にいままで400人以上の写真を撮っている。
  • プロとは言えないまでも、とても上手くなった。いまでも頼りにされることが多い。
  • 写真を撮り始める前に、『モデルの人を探さなくては』『カメラはどのメーカーにすべきか』と計画、検討していたら多分、いつまで経っても始められなかっただろう。
    •  
してみたいと思った努力のきっかけを逃してはならない。
  • 『努力を継続することは難しい』と先ほど書いた。付け加えるなら、努力を始めることも多少は難しい。
  • 動画ばかり見ているスケボーはいつまで経っても始められなかった。(随分前にようやく買ったが、メーカーや部材の名称に詳しくなるばかりでとても開始が遅かったし、いまだにトリックを決められない。でも楽しいからいいとしているが。)
  • 努力を始めるにはきっかけが必要だ。そして案外、そのきっかけでつまづく。
 

小さく始めて、検証する

 
最初に壮大な計画を描くと失敗する。
  • 壮大な計画のほとんどは達成できない。
  • 達成できない事柄が続くと、自分が無能に思えてきて、継続することが難しくなる。
 
小さく始めて、やりながらわかったことを集めていく。そして集まってから計画を描くようにする。
  • ネットの記事でいいし、知り合いに聞くでもいい。写真の編集作業はそうして手探りで学んでいった。
  • いろいろやっていく中でポージング、ロケハン、光の概念がわかってきた。
  • いきなり分厚い本を買っていたら、おそらくわからないことだらけできっと挫折していただろう。
 
最初に一定の課金や時間の消費を迫るものは、代替手段を考える。
  • 例えばサイクリングの趣味を始めるとしても、いきなりレーサーを買うのではなく、シェアサービスを利用したり、友達から借りたりする。
  • 半年間契約が必須なジムの入会などはほとんど辞めた方がいい。
  • 『通い放題』は、4-5回、通ってから意思決定をする
  • 実験しなくてはわからないことが多い。その時にフラットに意思決定できるように、損切りしやすくする。
 
 
 

 

2 / 道順を決める

 
「…マネジメントたる者は、…測定可能な目標で表せる分野があるかを考えなければならない。 
しかし、そのような分野がないならば、(中略)責任をもつことはできない。」- PFドラッカー
 

行動指標を決める

 
ゴールに対して直接ヒットする行動指標を持つ。
  • 結果指標と行動指標を混同しない。
  • 結果指標は直接コントロールできない。記録はするものの、行動指標に心を割く。
  • 例えば、体重(結果指標)を減らすなら総摂取カロリーと運動量が行動指標となる。
  • 言い訳のしようがない指標を使う。解釈が分かれるものは指標として機能しない。
 

記録する

 
結果を出すには時間がかかる。プロセスを記録すれば、励みになる。
ただし、記録が面倒な習慣はすぐに破綻する。
  • 努力した記録が残りさえすれば良い。ただし、記録が容易でなくてはいけない。自動化できるのが至高である。
  • 例えば、体重を記録するならスマホと接続するアプリ一択である。
  • 記録にかかるコストやハードルを出来る限り低くする。
 

習慣を磨く

 
習慣に対して、自覚的になる。
 
時間を浪費させたり、健康を害したりする悪しき習慣は、根本から断たなくてはいけない。
  • 『根本から断てていない』とは、例えばYouTubeやtiktokに、使用時間制限を付けることである。そんなものは無駄である。正しくやるならアカウントを削除して、アンインストールする一択である。
  • 電子タバコを辞めたいなら、「充電しない」ではなく、「本体を捨てるか売る」以外にない。
 
枠を明確に確保する。
  • いつ何を使ってどのくらいやるのかをきちんと定義する。
  • 「英語の勉強をする」よりも「月曜と水曜と金曜の7:00〜7:30の間は必ずxxxという本を開き、シャドーウィングと長文問題を解く」などの方が実効性がある。
 
代替案を用意する。
  • 時間枠を細かく抑えると、ちょっとした弾みで行動目標は破綻しやすくなる。朝活を必要とする努力なら寝坊した瞬間に崩れてしまう。
  • 毎日Aという時間帯に勉強をする。ただしできない場合はBという時間帯に変更する、など。
  • 時間帯、持ち物、相手の都合など、あらかじめ不測の事態に備える。
 

創意工夫を怠らない

 
大変すぎて続かないくらいなら、負担を軽くして続けられる方がいい。
行動がきちんと継続できているかを客観的に振り返り、阻害要因を丁寧に潰していく。
 
記憶ではなく記録を信用する。
  • 時間はカレンダーに記録する。
  • より細かく、スマホをどのくらい使っているかを知りたいなら、スクリーンタイムを見る。
  • お金の使い方は、クレジットカード・電子マネーの履歴を遡る。
  • サブスクリプションを定期的に見直す。
 
お金と時間を大切にして、複利で利くものに投資する。
  • 例えば洗濯乾燥機は、その後の洗濯に費やす時間を大幅に減らす。
  • 作業そのものに価値がないなら、機械に任せる。
 
スモールステップを踏む。
  • 例えば、洗い物をやるには腰が重いとする。そんなときは、シンクの蛇口を捻るだけ、と考える。洗濯は、ボタンを押すだけ、と考える。
  • やる気が先に来ることはない。作業を開始すればやる気は後からでもついてくる。
 
 

 

3 / 燃料を補給する

 

繋がりの力

 
Twitterに書いたり、ブログに書いたり、努力している理由を友人に伝えたりする。
 
自分のためだけに頑張ることが難しいときでも、大切な友人や、好きな子のためになら頑張れる。
  • 成績順位下位から猛勉強した結果、中高6年間、特進クラスからは、一度も落ちなかった。
  • 努力できたのは、中学1年生のときに一目惚れした子の成績が良かったからだった。
 
動機の質は結果に影響を与えない。方向性の正しさと実行量のみが結果に寄与する。
 

全身全霊をかけて休む

 
睡眠の質は全てに優先する。
  • 7:00から23:30まで、月曜から土曜まで、日曜も午前中、毎週、半年間ほど働いていた時期がある。はっきり言う。大失敗だった。
  • 睡眠時間は平均4〜5時間で、日中眠りそうになる中を必死に起きて仕事をしていた。
  • どんなに寝ても疲れは取れなかったし、寝足りなかった。ミスもたくさん増えた。
 
  • 半年経ってわかったことだ:世の中にはショートスリーパーで超人的に働ける人もいる。ただし、残念ながら自分はそうではなかった。その上、7時間程度寝なければパフォーマンスが落ちる燃費が悪い身体だった。
 
睡眠の質を向上させるアクションを全て実行する。
  • 湯船につかる
  • 散歩でいいから、運動をする
  • ストレッチをする
  • テレビとスマホの電源を切る
  • CBDを摂取する
  • 朝日を浴びる。
 
休日に予定を入れる。
  • 午前の早い時間に予定を入れる。
  • あらかじめどの時間に何をするか決める。
  • 有り余る日も計画しなければ無為に過ごしてしまう。
  • できれば外に出て運動する予定を立てる。
 

退路を断つ

 
どうしても努力したければ、強制的に努力せざるを得ない環境に身を置く。
  • 今までいちばん成長した時期は、社員番号2番で会社の創業に参画したときだった。
  • やらなくてはいけないし、やらざるを得ない。できないとか疲れているとか言っている場合ではなかった。
  • 英語が堪能な友人は『同僚が全員英語話者のときに英語力が身についた』と言っていた。
 

 

4 / 整える

 

鍛える

走る、歩く、重いものを持ち上げる、ストレッチをする。とにかく身体を動かす。
脆弱な身体では、頭脳労働の効率が落ちる。
  • 初めて気づいたのは、社会人になってから2年ほど経ってたからだった。
  • 高校生のときの集中力の速さ・深さ・長さの方が、全て今より優れている感覚があり、愕然とした。
  • 部活に勤しむ学生が、帰宅部よりも成績が良いことがある理由は、効率だと思う。筋肉は正直だ。とにかく身体を鍛える。
 

余暇を持つ

 
人に会う。
  • 小学校、中学校、高校、大学、前職など、疎遠になっている人に連絡を取ってみる。
  • 久しぶりに会った人間が昔と比べて変化していることや、友人の中に眠る「過去の自分の人物像」が、思わぬ形で原動力になることがある。
  • 「昔のおまえがこう言ってて、こんな影響受けた」「あいつも頑張っているし、負けてらんないな」単純だけど、とてもいいことが多かった。
 
遠くに行く。
  • たった1kmでもいいから、普段使わない道を使う。
  • サイクリングをしたり、2駅3駅歩いてみたりする。
  • 歩いているうちに、さまざまな思考を巡らすことができる。
  • 景色の違いが楽しい。風にあたることが気持ち良い。
  • すごく疲れるから、ぐっすり眠れる。
 
文章を書く。
  • ぐちゃぐちゃになった思考が、文章で形を持ち、頭の中が明瞭になる感覚が楽しい。
  • 長めの文章を書くことが、作品を書くかのごとくで楽しい。
  • 達成感がある。
  • 自分の価値基準をより強固にすることができる。
  • 価値基準が明確な発言や言葉は、重みがある。
 

捨てる・掃除をする

 
部屋をきれいにする。
綺麗にするとは、モノを捨てることだ。
  • いらなくなったもの、使わなくなったもの、買ったけど使ってないもの、全て捨てる。
  • 綺麗な状態にするために努力が必要な状態は、ものが多すぎる。
  • 全てを捨てるくらいの覚悟で捨てなくてはいけない。
  • 部屋が汚ければやる気がなくなる。
  • 部屋以外もそうだ:PCのフォルダ、いらないアプリ、冷蔵庫の中身。人間関係も。
  • 捨てて捨てて、身軽になる。
    •  

 

5 / 終わりに:アップデートは続く

 
最適な努力の仕方は、おそらく環境や機会によって変化する。
海外出張や、家族ができる、引っ越しをする、これから先もいろいろあるけれど、努力についてつぶさに思考し続けていく。
 
 
To live is the rarest thing in the world. Most people exist, that is all. Oscar Wilde

生きるとは、この世でいちばん稀なことだ。 たいていの人は、ただ存在しているだけである。 - オスカー・ワイルド(アイルランド出身の詩人、作家、劇作家)